こんにちは。SmartHR CEOの芹澤です。
これはSmartHR Advent Calendar 2023の13日目(シリーズ1)の記事です。
世の中にはたくさんの「性格診断」があり、ちょっとした会話のネタとして活用されていたりします。例えば、血液型を聞かれて「やっぱり!」とか「意外〜!」と言われた経験を持つ人は多いのではないでしょうか。ビジネスの世界においてもそれは同じです。ただし、ものによっては「会話のネタ」以上の効果を発揮するものもあり、なかなか侮れません。
ビジネスシーンで用いられる性格診断において、僕が一番意識しているのは「メタ認知」への活用です。自分自身がどういう性格なのか、人と比較してどう言う特徴や癖を持つのかというのは、意外と自分が一番わかっていないものです。今回は、そのような理解を深めるのに役立つ性格診断ツールや考え方をいくつか紹介します。
用法・用量
当然ながら、これらの分類は「そういう傾向にある」というものであり、それぞれのカテゴリーにデジタルに分かれるものではなく、グラデーションもあると思います。
また、この分類を他人に対して強く意識しすぎるといわゆる「偏見」となり、ネガティブに作用してしまうこともあります。分類や特徴に優劣をつけるのではなく、あくまでメタ認知や多様性理解を深めるためのツールとして活用していくことを前提としていただければと思います。
1: ストレングスファインダー
最初に紹介するのは「ストレングスファインダー」です。これはギャラップ社の開発した「才能診断」ツールで、177個の質問に答えることで、ギャラップ社の定義する34の資質のうちどれを強く持っているか診断してくれます。日本でも様々な企業で導入されていたり、無料でも(一部制限付きで)診断できるため、何かのタイミングでやられたことのあるかたも多いかと思います。
34の資質は以下に示す「実行力」「影響力」「人間関係構築力」「戦略的思考力」の4つに分類されていて、診断を行うと34の資質が強く持っている順に表示されます。
- 実行力
- 物事を成し遂げるのに役立つ資質
- 影響力
- 主導権を握り、物事を動かしていくことに役立つ資質
- 人間関係構築力
- 人を尊重し、チームを団結させることに役立つ資
- 戦略的思考力
- 情報を取り入れ、適切な判断を行うのに役立つ資質
自分がこの4つのタイプのどこに属するかを知るだけでも「強みを把握する」という観点で役に立つと思います。
34個の資質を個別に読み込むのはそれなりのコツが必要なのですが、上位と下位の資質は生涯を通して大きく変わることはないと言われているため、最低限それらだけでも覚えておくと良いかもしれません。
ちなみに、僕の資質の上位5つは「学習欲」「個別化」「達成欲」「最上志向」「着想」で、普段の生活でこれらの強みを活かせないかと考えるようにしていたりします。
- 学習欲
- 常に向上することに駆り立てられ、成果よりも学習すること自体に意義を見出す
- 個別化
- 各人の資質に関心を持ち、それらをまとめ、生産性の高いチームを作ることに長ける
- 達成欲
- 自分が多忙で生産的であることに、大きな満足感を得る
- 最上志向
- 改善を促す方法として長所に着目し、何事もより優れたものに変えようとする
- 着想
- アイデアに魅力を感じ、一見共通点のない現象に関連性を見出すことができる
個人でやってメタ認知を高めるのに役立つのはもちろん、チームメンバーでやって各人の強みやチームの傾向を把握するのにも役立ちます。
2: タイプ分け
次に紹介するのは「タイプ分け」です。これは株式会社コーチ・エィが開発したコミュニケーションタイプの分類で、コミュニケーションをとる相手がどのタイプなのかを把握することでより効果的なアプローチができるようになります。
この診断では人間のコミュニケーションの傾向を「コントローラー」「プロモーター」「サポーター」「アナライザー」の4つに分類していて、いくつかの質問に答えることで自分どのタイプに属しているのかを教えてくれます。
- コントローラー
- 自分の判断で、自分の思った通りに物事を進めていきたいと考える
- プロモーター
- 社交的で積極的な性格を持ち、人と活気よく物事を進めていきたいと考える
- サポーター
- 他人の感情に敏感で共感力があり、他人を援助することを好む
- アナライザー
- 多くの情報を集め、論理的に物事を分析することを好む
自分のタイプを把握することで、自分が普段どういうコミュニケーションを取りがちなのかがわかりますし、相手のタイプを合わせて把握することで、どのようなコミュニケーションをとるのが一番お互いにとって気持ち良いのかがわかるようになります。
この分析の面白いところは、「喋るのが早い」とか「身振り手振りが多い」のようにそれぞれの分類の特徴も言動に出やすいので、慣れてくるとなんとなく「あ、この人はこのタイプかも」とわかってくる点です。コーチ・エィが開発しているだけにコーチングや1on1でも使えますし、チームビルドにも役に立ちます。
ちなみに僕は「コントローラータイプ」です。スコアとしてはコントローラーが 60.3
と一番高く、その他アナライザーが 56.94
、プロモーターが 55.04
、サポーターが 46.52
という感じです。一緒に受けた他のメンバーと比較すると、各タイプにそこまで差がない方でした。
3: システム型 / 共感型
次に紹介するのは、「ザ・パターン・シーカー」という本で取り上げられているシステム型と共感型の考え方です。これは、人間の脳の傾向がSQ(システム化指数)とEQ(共感指数)の2軸で分類されるということを基本的な考えとします。
SQはシステム化への関心度を表し、これが高い人はドキュメントの細かな文言や、ハードウェアやソフトウェアが動く仕組みに関心を示します。小さい頃に機械を分解して遊んでいたような人はSQが高いと言えます。
EQは人の気持ちへの関心度を表し、これが高い人はコミュニケーションや教育、協調性、スピリチュアリティーなどに関心を示します。小さい頃から人と話すのが好きだったり、物語に共感して涙を流すことが多いような人はEQが高いと言えます。
イギリスの研究で60万人を対象にEQとSQに関する調査を行った結果、EQとSQはトレードオフの関係にあることがわかりました。つまり、EQが高い人はSQが低くなり、SQが高い人はEQが低くなるのです。研究ではこの傾向をもとに脳を以下の5つのタイプに分類しています。
- エクストリームE型
- EQが極めて強く、人が何を感じ、自分が何を話せばいいのかについては努力を要さずとも瞬時に察するが、パターン認識は弱い
- E型
- EQが強く、人間関係構築能力に優れる。人の気持ちを簡単に察知し、人を思いやることを好む
- B型
- EQとSQを同程度で持つバランスタイプ
- S型
- SQが強く、システム化能力に優れる。物事の仕組みに着目し、試行錯誤に没頭する
- エクストリームS型
- SQが極めて強く、複雑な物事の中にすら法則性を見出し、それに必要な計算も瞬時に行えるが、共感能力は低い
上記のうちエクストリームE型とエクストリームS型は、母集団にそれぞれ数%しか見られない稀なタイプだったようです。
僕はこの分類に関するテストを受けているわけではないのですが、エンジニアリングをしてきた経験から、S型の傾向にあるような感覚はあります。ただ、エンジニアリングに携わる人が全てS型である必要があるというと、そうは思いません。製品のいわゆる「look and feel」のような部分はE型の人のほうが得意なこともありますし、S型とE型が協働するためには橋渡し役としてB型の人もいたほうが良いでしょう。そう考えると、チームビルドにも役立つ考え方といえます。
なお、本の中ではこの「エクストリームS型」に着目し、彼らを物事の法則を見つける天才「パターンシーカー」とし、その特性や傾向を掘り下げています。パターンシーカーは物事の因果関係を「if-and-then」の見方で捉えることで、自然科学における偉大な発見や発明をしてきた人たちであるとする論じかたはなかなか面白いので、もし興味がありましたらぜひ本を読んでみてくださいませ。
4: 決めたい人 / 決められたい人
最後はシンプルに「決めたい人」と「決められたい人」」の2分類です。これは以下の動画の中でS人材・M人材として語られています(13:50~)。
この動画では「サディズム」と「マゾヒズム」のいわゆるS/Mという分類を、以下のように解釈するところから始まります。
- サディズム(S)
- 何かを取り込むことで孤独を癒す・安心する
- マゾヒズム(M)
- 何かに取り込まれることで孤独を癒す・安心する
ビジネスシーンにおいては、Sの人を「自分で物事を決めたい人」、Mの人を「誰かに決めてもらいたい人」として考察が進みます。
動画の中でも言われていますが、この考え方の良いところは、どちらが良い・強いと序列をつけるのではなく、どちらもフラットな特性であると考えられるようになることに思います。まさしく多様性理解が促進されるし、自分に合った環境を自ら探し出すきっかけになるように思います。
いかがでしたか
さて、以上で僕がビジネスシーンで意識している4つの性格診断を紹介させていただきました。
世の中にはここで紹介した以外にも様々な診断ツールがあります。たくさんの特性を覚えるのも大変なので、シーンに応じて自分が使いやすいものをいくつかピックアップして覚えておくと便利かなと思います。
また、繰り返しますが、それぞれの特性に優劣があるわけではなく、あくまでメタ認知や多様性理解を深めるための考え方としてご活用いただくのが良いです。そして、僕自身でも感じることですが、自分が置かれている役割や環境によって特性は変化することもあるように思います。あまり固定的に考えすぎず、現在時点における理解を深めるものとして捉えていただくと良いでしょう。
この年末年始、ぜひ性格診断を通して自分やチームの特性を掴んでみてはいかがでしょうか。